『今昔物語』清明と智徳との術くらべ
播磨国に智徳したたか者の法師陰陽師が住んでいた。明石の沖合に海賊が現れて通行の船を襲い、積み荷を奪い乗組員を殺して去った。船主と下人の二人だけが海に飛び込んで助かり、陸に上がって泣いているところを智徳が見つけ、事情を聞いて、海賊を捕まえてやるからといって襲われた時日を聞いた。やがて智徳は船主を連れて小舟で沖に出て、海上に文字を書き呪文をとなえ、陸に戻って待つうちに、七日たった頃、漂流船があらわれた。漕ぎよせてみると、船中には海賊どもが酔ったようになっており、奪った荷物もそのままであったので、すべてを取り返し、海賊どもはよく諭して放免した。

かのように智徳の陰陽術は海賊を呪縛し、船を引き寄せる威力を持っていたが、安倍清明と術くらべをしようと思い、上京して清明の邸を訪れ、初心者の体を装って弟子入りを頼んだ。清明は智徳を見て陰陽道の練達の士であることを見抜き、また智徳が連れている二人の童子はその式神に相違ないと直感、袖の中に両手を入れ印を結び、ひそかに呪文をとなえた上で弟子入りの願いは承知した。ただし今日は暇がないので直ぐにお帰りください。そして吉日に来てくださいと応答した。智徳はこうして出て行ったが、一、二町いったところでまた引き返し、あちこち探す様子であったが、清明の前へ来て、伴に連れた童子二人がいなくなったが、それを出してもらいたいともとめた。清明は一向に知らないというと、このとき智徳はごもっともであると兜をぬいであやまった。清明は、あなたが人の腕前をテストしようと式神を連れきたのが不埒(ふらち)だと思った。私をそんなことでだませるかといって、また袖に手を入れて呪文を読むようにすると、たちまち童子二人が出てきた。智徳は式神を使うことはなれているが、これを隠すことは出来ないと告白した。改めて弟子入りした。
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